読書記録1

今日からこのブログに読書記録をつけます。できれば毎日更新したいと思っています。

今日は、ハロルド・ジョセフ・バーマン著(宮島訳)『法と革命Ⅱ-ドイツとイギリスの宗教改革が欧米の法制度に与えた影響-』(2010年)の紹介をします。とりわけ、自分が興味を持っている6世紀の「ドイツ革命」に言及した部分の要約をしてみます。

 

序論

本書の分析対象となるのはルターの宗教改革に端を発した16世紀のドイツ革命と、カルバン派による宗教改革に端を発したイギリス革命である。この二つのかくめいは、ドイツとイギリスの政治制度、社会制度を根本的に変革した。

まず、ドイツ革命について。ドイツ革命の原因は、グレゴリウス7世によって開始された教皇革命で確立された教会の権限が腐敗したことにある。ルターは、1517年に教会裁判が無効だと宣言した。彼の主張は、神の前では聖職者ですら「一人の信者」にすぎず、信者は神の言葉を記した聖書に対してだけ責任を負えばいい、というものである。ルターによれば、教会に立法権はなく、立法権は君主やその役人など「お上  Obrigkeit」のものとされた。

ルターは「両剣論」に変えて、「両国論 two kingdoms theory」を主張した。ルターは「天上の国」と「地上の国」を対置した上で、「地上の国」では君主やその役人の作る法律の権威を重視した。ルター派の諸侯たちは、それまで教会の権限とされていた事柄を法令として交付していった。教会令、婚姻令、規律令、学校令、救貧令がそれにあたる。これらの作成にあたったのはメランヒトンを代表とするルター派神学者たちであった。

メランヒトンたちは、スコラ学者の分類法とは全く異なる分類法を持って法を整理した。彼の用いた分類法は、のちにjus commune(ローマ法・教会法)を論じる際にも採用されることになる。

メランヒトンの分類法は、まず法律をすべての学問分野に共通する法オフに従って整理した上で、十戒に関連づけた。下位に位置付けられた法律が上位の法律の趣旨に従って解釈されるようにし、最終的には聖書に従って解釈されるようにしたのである。このようにして、聖書を法源とする刑法解釈学が形成されたのである。